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POMファイルの構成と記述方法を1から(初心者向け)

blank Java

Java開発において、Mavenは依存関係の管理やビルドプロセスの自動化に欠かせないツール。そしてその中核となるのがPOMファイル(pom.xml)です。

参考 Mavenとは?

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本記事では、POMファイルをゼロから自力で作成する手順を詳しく解説します。

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POMファイルとは何か

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図1:Pomファイルとは?

POMファイル(pom.xml)は、Mavenプロジェクトの基本設定や構成情報を記述するXMLファイルです。

その構成は次の章で解説する通りいくつかのセクションに分かれており、各セクションがプロジェクトのビルドや依存関係の管理に重要な役割を果たします。

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ざっくり言えば、そのプロジェクトがどんなプロジェクトなのか?どんな部品を使っているのか?を明示する料理のレシピなようなものだと思っておいてください。

POMファイルの主要な構成要素

  1. プロジェクト情報
    • <modelVersion>: POMモデルのバージョンを指定します(通常は4.0.0)。
    • <groupId>: プロジェクトを識別するためのグループID(通常は組織のドメイン名を逆順で記述)。
    • <artifactId>: プロジェクトの名前を指定します。
    • <version>: プロジェクトのバージョンを指定します。
    • <packaging>: 生成されるアーティファクトの形式(jarwarpomなど)。
    • <name>: プロジェクトの人間が読める名前。
  2. プロパティ
    • <properties>: ビルドプロセスや依存関係の設定で使用する変数を定義します。
      • 例:
        • <project.build.sourceEncoding>: ソースコードの文字エンコーディングを指定(例:UTF-8)。
        • <maven.compiler.source><maven.compiler.target>: Javaのソースコードとバイトコードのバージョンを指定。
  3. 依存関係
    • <dependencies>: プロジェクトが依存する外部ライブラリやモジュールを定義します。
      • <dependency>タグ内で以下を指定:
        • <groupId>: 依存ライブラリのグループID。
        • <artifactId>: 依存ライブラリの名前。
        • <version>: 依存ライブラリのバージョン。
        • <scope>: 依存関係の適用範囲(例:compiletestruntime)。
  4. ビルド設定
    • <build>: プロジェクトのビルドプロセスをカスタマイズする設定を行います。
      • <plugins>: ビルド時に使用するプラグインを定義します。
        • 例: maven-compiler-pluginでJavaコンパイラのバージョンやオプションを設定。
  5. リポジトリ
    • <repositories>: 依存関係を取得するためのリモートリポジトリを指定します。
      • <repository>タグ内でリポジトリの<id><name><url>を指定。
  6. プラグインリポジトリ
    • <pluginRepositories>: ビルドプラグインを取得するためのリポジトリを指定します。
      • <pluginRepository>タグ内で必要な情報を指定。
  7. 配布管理
    • <distributionManagement>: ビルドしたアーティファクトの配布先リポジトリを指定します。
      • <repository><snapshotRepository>でリリース版とスナップショット版のリポジトリを設定。
  8. プロファイル
    • <profiles>: ビルド時の設定を環境や目的に応じて切り替えるためのプロファイルを定義します。
      • <profile>内で特定の設定を上書きまたは追加できます。
  9. 報告設定
    • <reporting>: プロジェクトのレポート生成に関する設定を行います。
  10. モジュール
    • <modules>: マルチモジュールプロジェクトの場合、子モジュールを定義します。

POMファイルを1から作成する

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ここからPOMファイルを1から作成していく流れを説明していきます。より具体的なイメージが湧くはずです。

1.基本的なファイル構造の作成

まずpom.xmlファイルの基本構造を作成します。以下のコードを新規ファイルにコピーしてください。

<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<project xmlns="http://maven.apache.org/POM/4.0.0"
         xmlns:xsi="http://www.w3.org/2001/XMLSchema-instance"
         xsi:schemaLocation="http://maven.apache.org/POM/4.0.0
                             https://maven.apache.org/xsd/maven-4.0.0.xsd">
    <modelVersion>4.0.0</modelVersion>

    <!-- ここに各種設定を追加していきます -->

</project>

2. プロジェクト情報の設定

プロジェクトの基本情報を設定します。プロジェクトの基本情報とは、プロジェクトを一意に識別し、他のプロジェクトや依存関係と区別するための情報です。

<groupId>com.example</groupId>
<artifactId>my-app</artifactId>
<version>1.0.0-SNAPSHOT</version>
<packaging>jar</packaging>
<name>My Application</name>
  • <groupId>: 組織やプロジェクトを識別するためのIDです。
  • <artifactId>: プロジェクトの名前を指定します。
  • <version>: プロジェクトのバージョンを設定します。
  • <packaging>: 生成するパッケージの形式(jar、warなど)を指定します。
  • <name>: プロジェクトの表示名です。

これらの情報はシステム的に以下のような役割を果たします

  • 依存関係の解決:他のプロジェクトがこのプロジェクトを利用する際、groupIdartifactIdversionの組み合わせで正確に識別します。
  • ビルド成果物の命名:生成されるファイル(例えばJARファイル)の名前やパスに反映されます。
  • リポジトリへのデプロイ:アーティファクトをリポジトリに配置する際のディレクトリ構成やアクセスパスに影響します。

つまり、これらの設定を正しく行うことは、プロジェクトの管理や他のプロジェクトとの連携において非常に重要です。誤った情報を設定すると、依存関係の解決ができなくなったり、ビルドやデプロイに失敗する原因となります。

3. プロパティの定義

ビルドプロセスで使用する変数を定義します。これらのプロパティはプロジェクト全体で再利用され、設定の一元管理が可能になります。

<properties>
    <project.build.sourceEncoding>UTF-8</project.build.sourceEncoding>
    <maven.compiler.source>1.8</maven.compiler.source>
    <maven.compiler.target>1.8</maven.compiler.target>
</properties>
  • <project.build.sourceEncoding>: ソースコードの文字エンコーディングを指定します。
  • <maven.compiler.source> / <maven.compiler.target>: Javaのバージョンを設定します。

システム的な役割:

  • エンコーディングの統一:異なる環境でも文字化けやコンパイルエラーを防ぐために、エンコーディングを統一します。
  • Javaバージョンの指定:プロジェクトが特定のJavaバージョンに依存している場合、ここで明示的に指定することでビルド時の不整合を防ぎます。

これらのプロパティを適切に設定することで、ビルドプロセスの安定性と移植性を確保できます。

4. 依存関係の追加

プロジェクトで使用するライブラリを定義します。これにより、必要な依存関係が自動的にダウンロード・解決されます。

例として、JUnitを追加します。

<dependencies>
    <dependency>
        <groupId>junit</groupId>
        <artifactId>junit</artifactId>
        <version>4.13.2</version>
        <scope>test</scope>
    </dependency>
</dependencies>
  • <groupId>: ライブラリの組織ID。
  • <artifactId>: ライブラリの名前。
  • <version>: 使用するバージョン。
  • <scope>: ライブラリの適用範囲(ここではテスト時のみ)。

システム的な役割

  • 依存ライブラリの解決と管理:必要なライブラリを自動的に取得し、クラスパスに追加します。
  • ビルドの再現性:同じバージョンのライブラリを使用することで、ビルド結果の一貫性を保ちます。

適切な依存関係を設定することは、プロジェクトの機能性と安定性に直結します。誤ったバージョンや不要な依存関係を指定すると、バグやセキュリティリスクの原因となります。

5. ビルドプラグインの設定

ビルドプロセスをカスタマイズするためのプラグインを追加します。ここでは、コンパイルプラグインを設定します。

<build>
    <plugins>
        <plugin>
            <groupId>org.apache.maven.plugins</groupId>
            <artifactId>maven-compiler-plugin</artifactId>
            <version>3.8.1</version>
            <configuration>
                <source>${maven.compiler.source}</source>
                <target>${maven.compiler.target}</target>
            </configuration>
        </plugin>
    </plugins>
</build>

この設定により、プロジェクトは指定したJavaバージョンでコンパイルされます。

システム的な役割

  • ビルドプロセスの拡張と制御:コンパイル、テスト、パッケージ化、デプロイなどのビルドフェーズで特定の動作を実行します。
  • プラグインによる機能追加:デフォルトのビルドプロセスに加え、カスタムの処理を組み込むことができます。

ビルド設定を適切に行うことで、プロジェクトのビルドやデプロイがスムーズになり、生産性が向上します。

6. リポジトリの設定(必要に応じて)

デフォルト以外のリポジトリから依存関係を取得する場合、リポジトリを指定します。

<repositories>
    <repository>
        <id>central</id>
        <name>Maven Central Repository</name>
        <url>https://repo.maven.apache.org/maven2</url>
    </repository>
</repositories>

通常、Maven Central Repositoryがデフォルトで使用されるため、このセクションは省略可能です。

システム的な役割

  • 依存関係の取得先を指定:デフォルト以外のリポジトリからライブラリを取得する際に必要です。
  • 社内リポジトリの利用:企業内で管理するライブラリを取得する場合に設定します。

リポジトリを正しく設定することで、必要な依存関係を確実に取得でき、ビルドの失敗を防ぎます。

7. 完成したPOMファイルの例

以上の設定をまとめると、以下のようなpom.xmlが完成します。

<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<project xmlns="http://maven.apache.org/POM/4.0.0"
         xmlns:xsi="http://www.w3.org/2001/XMLSchema-instance"
         xsi:schemaLocation="http://maven.apache.org/POM/4.0.0
                             https://maven.apache.org/xsd/maven-4.0.0.xsd">
    <modelVersion>4.0.0</modelVersion>

    <groupId>com.example</groupId>
    <artifactId>my-app</artifactId>
    <version>1.0.0-SNAPSHOT</version>
    <packaging>jar</packaging>
    <name>My Application</name>

    <properties>
        <project.build.sourceEncoding>UTF-8</project.build.sourceEncoding>
        <maven.compiler.source>1.8</maven.compiler.source>
        <maven.compiler.target>1.8</maven.compiler.target>
    </properties>

    <dependencies>
        <dependency>
            <groupId>junit</groupId>
            <artifactId>junit</artifactId>
            <version>4.13.2</version>
            <scope>test</scope>
        </dependency>
    </dependencies>

    <build>
        <plugins>
            <plugin>
                <groupId>org.apache.maven.plugins</groupId>
                <artifactId>maven-compiler-plugin</artifactId>
                <version>3.8.1</version>
                <configuration>
                    <source>${maven.compiler.source}</source>
                    <target>${maven.compiler.target}</target>
                </configuration>
            </plugin>
        </plugins>
    </build>

</project>

8. カスタム設定の追加(オプション)

プロジェクトの要件に応じて、以下のようなセクションを追加できます。

プラグインリポジトリの設定

<pluginRepositories>
    <pluginRepository>
        <id>central</id>
        <name>Maven Central Repository</name>
        <url>https://repo.maven.apache.org/maven2</url>
    </pluginRepository>
</pluginRepositories>

システム的な役割

  • ビルドプラグインの取得先を指定:デフォルト以外のプラグインリポジトリからプラグインを取得する場合に必要です。

プラグインリポジトリを設定することで、カスタムプラグインの利用が可能になり、ビルドプロセスを柔軟に拡張できます。

配布管理の設定

<distributionManagement>
    <repository>
        <id>releases</id>
        <name>Releases Repository</name>
        <url>https://example.com/maven2/releases</url>
    </repository>
    <snapshotRepository>
        <id>snapshots</id>
        <name>Snapshots Repository</name>
        <url>https://example.com/maven2/snapshots</url>
    </snapshotRepository>
</distributionManagement>

これらの設定は、アーティファクトをデプロイする際に使用されます。

システム的な役割

  • アーティファクトの公開先を指定mvn deployコマンドでビルド成果物をリポジトリにアップロードします。
  • チーム内共有や継続的デプロイ:他の開発者やプロジェクトと成果物を共有する際に使用します。

配布管理を正しく設定することで、ビルド成果物の共有と再利用が容易になり、開発効率が向上します。

補足

  • 公式ドキュメント: より詳細な情報や追加の設定項目については、Mavenの公式ドキュメントを参照してください。
  • バージョン管理: POMファイルは頻繁に更新される可能性があるため、バージョン管理システム(GitHubなど)で管理することをおすすめします。
  • 依存関係の衝突: 同じライブラリの異なるバージョンを複数指定すると、依存関係の衝突が発生することがあります。<dependencyManagement>セクションを活用してバージョンを統一しましょう。

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