Webサービスを利用する際、ログインやデータのやり取りなどで認証を必要とするシーンが存在します。
この記事では認証の方法として広く一般的に利用されているJWT(JSON Web Token)について解説します。
JWTとは?
JWT(JSON Web Token)は、ユーザーの認証情報やその他のデータを安全にやり取りするためのトークン形式の標準規格です。JSON形式でデータを保持し、署名を付けることでデータの改ざんを防止します。
- Qトークンとは?
- A
ユーザーやアプリケーションを識別し、認証・認可を実現するための「デジタルな証明書」のようなもの。アクセス権限や有効期限などの情報が含まれます。
- QJSONとは?
- A
JSON(JavaScript Object Notation)は、データを「キーと値のペア」で表現するシンプルなフォーマット。軽量で人間にも読みやすく、プログラム間でのデータ交換に広く使われています。
簡単に言うと、JWTは「安全な情報のやり取りを実現するためのデジタルなパスポート」のようなものです。
JWTを使うメリット
JWTを使うことで、以下のようなメリットがあります。
セッション認証との違い
従来のセッション認証では、ユーザーがログインするとサーバー側でセッション情報を保持し、ユーザーにはセッションIDが付与されます。しかし、この方法ではサーバー側に状態を持つため、サーバーの負荷が増えたり、負荷分散が難しくなったりします。
一方、JWTではサーバーが状態を持たないステートレスな認証が可能です。これにより、サーバーの負荷を軽減し、複数のサーバー間での負荷分散が容易になります。
JWTの仕組み
JWTは以下の3つの部分から構成されています:
- ヘッダー(Header)
- ペイロード(Payload)
- 署名(Signature)
これらはそれぞれBase64URLエンコードされ、ピリオド(.)で区切られて結合されます。
- QBase64URLエンコードとは?
- A
Base64エンコードの一種。URLやファイル名で安全に使用できる形式に変換する方法です。
通常のBase64エンコードで使われる文字列の一部を、URLで問題なく扱える文字に置き換えています。
1. ヘッダー(Header)
トークンのタイプ(JWT)と署名アルゴリズムの情報が含まれます。例:
{ "alg": "HS256", "typ": "JWT" }
2. ペイロード(Payload)
ユーザー情報や有効期限などのクレーム(属性)が含まれます。標準クレームの例:
iss
:発行者(Issuer)sub
:主体(Subject)exp
:有効期限(Expiration Time)
例:
{ "sub": "1234567890", "name": "山田太郎", "admin": true, "iat": 1516239022 }
3. 署名(Signature)
ヘッダーとペイロードを結合し、秘密鍵でハッシュ化したものです。これにより、データの改ざんを検出できます。
参考 共通鍵暗号方式/公開鍵暗号方式とは?初心者向けに3分でわかりやすく解説
JWTの生成と検証の流れ
- ユーザー認証:ユーザーがログイン情報を送信します。
- トークン生成:サーバーがユーザー情報を元にJWTを生成します。
- トークン送信:生成したJWTをユーザーに返します。
- リクエスト時のトークン送付:ユーザーは以降のリクエストにJWTを含めます。
- トークン検証:サーバーは受け取ったJWTを検証し、リクエストを処理します。
JWTの実装方法
JWTを実装するには、以下の手順を踏みます。
ステップ1:ライブラリの導入
各プログラミング言語には、JWTを扱うためのライブラリがあります。例えば:
- Node.js:
jsonwebtoken
- Python:
PyJWT
- Java:
jjwt
- PHP:
firebase/php-jwt
ステップ2:トークンの生成
ユーザーが認証されたら、サーバー側でトークンを生成します。例(Node.js):
const jwt = require('jsonwebtoken'); const payload = { userId: user.id, name: user.name }; const token = jwt.sign(payload, '秘密鍵', { expiresIn: '1h' });
ステップ3:トークンの送信
生成したトークンをユーザーに返します。HTTPヘッダーのAuthorizationに含めるのが一般的です。
res.header('Authorization', 'Bearer ' + token);
ステップ4:トークンの検証
ユーザーからのリクエストを受け取ったら、トークンを検証します。例(Node.js):
const token = req.headers['authorization'].split(' ')[1]; jwt.verify(token, '秘密鍵', (err, decoded) => { if (err) { return res.status(401).send('トークンが無効です'); } req.user = decoded; next(); });
セキュリティ上の注意点
JWTを安全に使用するためには、以下のポイントに注意が必要です。
秘密鍵の管理
署名に使用する秘密鍵は、厳重に管理しましょう。漏洩すると、トークンが偽造されるリスクがあります。
有効期限の設定
トークンの有効期限を適切に設定し、長期間有効なトークンを避けます。短い有効期限にすることで、万が一トークンが盗まれても被害を最小限に抑えられます。
HTTPSの利用
通信を暗号化するために、HTTPSを使用しましょう。これにより、中間者攻撃によるトークンの盗聴を防げます。
不要な情報を含めない
トークンには必要最低限の情報だけを含めましょう。機密性の高い情報を含めると、セキュリティリスクが高まります。
よくある間違いと対策
JWTの実装で陥りやすいミスと、その対策を紹介します。
署名なしのトークンを受け入れてしまう
署名がない、または無効なトークンを受け入れてしまうと、セキュリティが崩壊します。必ず署名の検証を行いましょう。
秘密鍵をコード内にベタ書きする
秘密鍵をコード内に直接記述すると、ソースコード管理システムから漏洩する可能性があります。環境変数や安全な設定ファイルを使用しましょう。
トークンの無効化ができない
JWTは一度発行すると、その有効期限内は有効です。ユーザーがログアウトした場合や、権限が変更された場合でもトークンが使えると問題です。対策として、ブラックリスト方式やトークンの短期化を検討しましょう。
JWTの活用事例
JWTはさまざまな場面で活用されています。
- WebAPIの認証:RESTful APIでのユーザー認証に利用。
- シングルサインオン(SSO):一度のログインで複数のサービスにアクセス可能に。
- モバイルアプリとの連携:サーバーとアプリ間の安全な通信に利用。
まとめ
JWTとは、ユーザー認証と情報の安全なやり取りを可能にするトークン形式の技術です。サーバーが状態を持たないため、スケーラビリティが高く、現代のウェブ開発において重要な役割を果たしています。正しい実装とセキュリティ対策を行うことで、安全で効率的なシステムを構築できます。
この記事を通じて、JWTの基本から実装方法、注意点まで理解していただけたでしょうか。ぜひ実際のプロジェクトでJWTを活用してみてください。