プロジェクト管理の世界で有名な2つの法則「学生症候群」と「パーキンソンの法則」について。
この2つの概念はプロジェクトマネージャー試験などで基本知識として出題されるだけでなく、普段の仕事にも応用できる考え方であるため、知っていると想像以上に得をします(普段の仕事で活かせる知識です!)。
このページでは、「学生症候群」と「パーキンソンの法則」について端的に内容を整理し、具体例を踏まえながら普段の業務(プロジェクト管理)に活かす方法を考えていきます。
プロジェクトマネージャー試験にもよく出題される内容。
プロジェクトマネージャーを目指す方や、大きなプロジェクトのメンバーの一員になる方であれば、実際の業務で活きてくる重要知識ですので必見です!是非最後までご覧ください。
学生症候群とは?
学生症候群(Student Syndrome)とは、簡単に言うと「締め切り直前まで作業を開始しなくなる傾向のこと」です。
学生が期限ギリギリまで宿題を始めないことになぞらえて、「作業の開始時期を遅らせてしまう」心理的特性を、学生症候群と呼びます。
この「学生症候群」という言葉の名付け親は科学者のエリヤフ・ゴールドラット。
彼の著書「クリティカルチェーン」で、スケジュールに大幅な余裕があるにも関わらずプロジェクトが遅延する原因として初めて「学生症候群」という言葉が用いられました。
プロジェクトマネージャーの職務にある人間や、プロジェクトマネージャーを目指す方であれば頭に入れておきたい本の1つ。
プロジェクトを1つでも経験した方であれば、うなずける内容(なぜプロジェクトが進まないのか・・・?)ばかり。少なくとも、チームを管理する立場にある人間であれば、この本の内容は知っておきたいものです。
学生症候群の具体例
そもそも、学生症候群は何がいけないのかというと、スケジュール作成時にいくら余裕を作っても意味がなくなってしまうという点です。
例えば、プロジェクト計画時にある作業を完了させるまで「5か月」という期間を設定したとしましょう。
本来であれば、2か月間で終わるスケジュールと見込み、リスクやスコープ変更の可能性を加味したスケジュールです。
この場合に、学生症候群が発生してしまうとどうなるか?
リスクが現実にならなくても、作業スコープが当初から変わらなくても2か月で終わらなくなります。
つまり、初めは余裕期間として3か月分の時間を設定していたとしても、学生症候群が発生してしまえば、作業の開始自体が大幅に遅れてしまうのです。
もし、仮に何らかのリスクが現実のものとなり、作業の必要工数が増えてしまえばプロジェクトは炎上してしまいます。(本来2か月間の余裕期間「セーフティ」を持たせたはずなのに、全く機能しなくなるということです。)
このような現象を引き起こしてしまうのが、学生症候群の怖いところです。
実は、学生症候群と似たような法則があります。それが、「パーキンソンの法則」です。
パーキンソンの法則
イギリスの政治学者シリル・ノースコート・パーキンソンが名付けたパーキンソンの法則。
パーキンソンの法則は、簡単に言うと「人間は時間とお金は、用意された分すべてを利用してしまう」ということ。
第1の法則
仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する。
第2の法則
支出の額は、収入の額に達するまで膨張する。
特に第1の法則については社会人であれば、頭の片隅に常に置いておきたい戒めとなる大事な法則です。
パーキンソンの法則の具体例
例えば、毎日の定例会議。朝の30分間でその日の作業内容や前日の作業進捗を確認する目的で行っているとします。
これをパーキンソンの法則に則って考えると、「この会議は、確認内容がすべて完了しても、少なくとも30分間以上は続く」ということになります。
心当たりがある人も多いのではないでしょうか。大小さまざまな会社でよく聞く「あるある事例」です。
会議で確認すべき内容はすべて確認が完了したのに、時間が余っていると「あれはどうなの?」「これはどうなの?」「そういえば・・・。」みたいにきっちり時間までは会議を続けてしまうシーンに出会ったことがある人も多いのではないでしょうか。
これがパーキンソンの法則です。パーキンソンの法則では、時間は与えられた分だけすべて利用してしまうことに警鐘を鳴らしています。
また、パーキンソンの法則で見落としがちな点は、個人にもこの法則が当てはまってしまうという点。
「来週までに、プログラミング開発を2つ完了させよう!」
「今日の18時までに、会議資料を完成させよう!」
このように予定を立てた場合、それより前に作業が終わっても、「もう少し、精度を高めよう。」「もう少し、内容を推敲しよう。」なんだかんだで、与えられた時間をすべて費やしてしまうのではないでしょうか。
パーキンソンの法則は、プロジェクト全体だけではなく個人レベルでも当てはまるのです。
学生症候群/パーキンソンの法則の対策
プロジェクト管理の視点から、学生症候群とパーキンソンの法則への対策について。
結論から言えば、それら2つのプロジェクト遅延リスクを低減するには「各タスクにバッファを持たせないようにスケジューリングする」だけでOK。
2時間で終わると見積もった作業については、2時間でスケジューリングする。3日で完了する作業は、3日間のスケジュールしか設定しなければ良いのです。
実は、この「リスクやその他の差し込み作業を事前にバッファとして上乗せしない」スケジューリング方法は「クリティカルチェーン法」として知られています。
本ページでは、深く触れませんがもし今のプロジェクトが、このページで解説した2つの法則に当てはまっている場合、スケジューリング方法をクリティカルチェーン法に変えてみてはいかがでしょうか。
学生症候群とパーキンソンの法則を知ることで、プロジェクトの進捗を適切に管理できるようになるはずです。