このページではFI(財務会計)とCO(管理会計)の両モジュールで重要な役割を果たす「原価センタ」について解説します。
原価センタを一言で言えば「組織内のどこで原価が発生しているか」を把握するために用いられる「組織設定」の一つです。
このページでは、基本的な概念、設定方法や注意点について解説し、ざっくり原価センタがなにものであるかをざっくり理解できるように説明していきます。
SAP初心者の方であれば必見の内容ばかりです。是非最後までご覧ください。
前提:管理会計・COとは?
管理会計とは社内向けに費用・収益の分析をすることです。
財務会計も管理会計も、お金の流れを管理するという点では同一ですが、 FIの最終ゴールが「財務諸表の作成」、すなわち社外向けの報告であるのに対し、COのゴールは社内向けのレポートであるという点で異なります。
CO(管理会計)⇒ 費用・収益の分析 ⇒ 社内向け
FI (財務会計)⇒ 財務諸表の作成 ⇒ 社外向け
FIモジュールは、財務諸表の作成をゴールを目的としているため、組織設定も財務諸表を作成する単位で行えばOK。
ですが、管理会計では、会社内部向けに分析を行う必要があることから、財務諸表よりも細かい粒度(例:経理部門、〇〇プロジェクト)で組織を設定する必要があります。
この管理会計上における組織設定の1つが原価センタです。
COモジュールの概要をザックリと解説しています。CO-OM、CO-PAなどの言葉にピンとこない方は是非こちらの記事に寄り道してみてください。
原価センタとは?
原価センタは「会社内のどこで費用が発生するかを把握するため」に用いる組織単位です。
会社コードが「財務諸表出力」の単位、つまり法人単位で1つ設定するのに対し、原価センタは会社内における原価管理の最小単位の部署ごとに設定されます。
原価管理の最小単位―。
つまりこれ以上分解できない単位で原価センタは設定されることが基本となります。
「営業部門」という部単位で原価センタを登録するのか、「営業部門」配下の「営業1課」という課単位で設定するのか。
これは企業の管理方針によるのでどちらでもOK。
もし「課」単位で原価管理を行いたい、ということであれば原価センタは課単位で設定することになりますし、いやいや「部」単位で良いということであれば「部」単位で設定します。
各企業ごとの原価センタ設定方針により原価センタ体系がバラバラとなるのが分かりづらくなってしまうポイントですが、システム的な観点から原価センタの役割について丁寧に整理できれば決して難しくはありません。
以下は原価センタのシステム的な位置づけを整理したものです。
原価センタは会社コードごとに定義されます。
上記例では、経理部門・製造部門・人事部門では部門単位で原価センタを設定していますが、営業部門だけは更に細かく「営業1課から営業4課」と1階層深い単位で設定しています。
先ほど、言った通りこれは一例ですので、必ずしも営業部門の下に営業1課から営業4課までを設定する必要性はありません、
要はその会社がどこまで分析したいのか次第です。
きっとこの例にあげた株式会社は、営業部門で計上されるコストを注視しており、なんとか営業費用を削減できないか、ということに心を砕いているのだろうと推察されます。
原価センタは、「コストセンタ」「コストセンター」とも呼ばれます。
意味は全く同じですので、適宜現場で利用される言葉に合わせて使いましょう。
原価センタと原価センタグループ
原価センタグループとは、原価センタを一つにまとめてグルーピングしたものを言います。
先ほどの図で言えば、営業部門が「原価センタグループ」であり、それ以外(営業1課~営業4課・経理部門・製造部門・人事部門)が「原価センタ」です。
理解しやすいように更に別の図を用意しました。以下の図は、原価センタと原価センタグループが分かりやすく整理されています。
つまり、費用計上をするのは原価センタであり、それをまとめてグルーピングしたもの(レポートの集計単位)が原価センタグループとなります。
費用の計上先はあくまでも、「原価センタ」です。原価センタグループは原価センタをまとめてレポーティングする単位であるということを理解しましょう。初めに「原価センタは費用の発生元を特定するために設定する」と説明した意図はここにあります。
原価センタと原価センタグループの違いは明確に分別できるようにしておきましょう。
原価センタ―標準階層設定
原価センタを登録する前に、原価センタの階層関係を定義する必要があります。
階層は複数設定できるのですが、最も基本となる最初の階層をしないと原価センタの登録自体ができません。(原価センタは、必ず1つの階層に紐づきます。)
この最も基本となる階層定義を「標準階層」と呼びます。
原価センタの登録前には「標準階層」の登録が必要となります。
ちなみに、標準階層を登録せずに原価センタを登録しようとすると以下画面のようにエラーが出ます。
標準階層設定:KSH1
標準階層は「トランザクションコード:KSH1」で登録します。
※変更は KSH2、照会は KSH3 で行います。
財務諸表バージョンの登録と同様に階層を定義していくだけの簡単なお仕事です。
原価センタ登録方法:KS01
原価センタの登録はトランザクションコード:KS01で行います。
ここでは必須項目の値について解説します。
原価センタ:名称
原価センタの名称を設定します。エンドユーザが原価センタを識別する際にここで設定した名称が利用されます。
そのため通常は部門名称など、分かりやすい名称を設定します。
原価センタは物理削除ができないため、原価センタ廃止の際、名称の先頭に「【廃止】」や「【使用不可】」などを設定してユーザに使用不可の旨がわかるように運用する場合もあります。
原価センタ:責任者
システム的にほぼ意味はない、と推測しています。(断言はできませんが・・・)
別にユーザIDを割り当てなければいけないということはなく、テキストで適当に登録しておけばOKです。
ある企業では当該部門の部長名を設定していましたし、ある企業はシステム登録者(保守作業を行ったユーザ)を設定していました。
いずれにせよ、どのように運用していくか次第の項目と言えます。
原価センタカテゴリ
原価センタを束ねる上位概念です。
どのような働きをするのか、という単位でまとめることもありますし、部門単位でまとめることもあります。
事前にSAP標準で定義されているカテゴリもありますが、ユーザ定義も可能です。
階層エリア
どの階層に属するかを設定します。
どこの階層に紐づくのか。先の例で言えば、標準階層を設定します。
階層はレポート体系や原価管理方針に沿って階層関係が複数設定されるため、ここでどの階層に属するのかを定義することになります。
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