SAPのFIモジュールにおける超・重要知識:勘定コードマスタについて解説します。
勘定コードとは、勘定科目を表すコードのこと。このコードがSAP上で設定されていない場合、会計伝票の転記を行うことはできません。
本ページ前半では、主にSAPを初めて利用する方向けに勘定コードマスタの基礎的な内容を解説。後半に行くにつれて、SAPの導入/運用・保守に関わる人向けの解説となります。
SAPの会計モジュール(FI)を業務で利用する方や、SAPの導入/運用・保守に関わる方であれば知らないと恥ずかしい超・重要知識です。是非最後までご覧ください
SAP:勘定コードとは?
勘定コードとは、 総勘定元帳(BS:貸借対照表勘定およびPL:損益計算書勘定)に使用される全ての勘定科目をコード化したものです。
勘定科目とは「光熱費」とか「銀行預金」とか、お金の種類を表すものです。
会計業務で取引の内容を記録する際に(記帳する際に)必ず利用されます。
勘定コードを利用せずに仕訳を計上することはできません。したがって、SAPで会計伝票をはじめあらゆる伝票を投入する場合には必須の設定です。
勘定コード表
勘定コードを1つのセットにまとめたものを勘定コード表と呼びます。
この勘定コード表には、最低限法的なレポート要件と標準的な会計慣例を満たすだけの勘定コードが登録されている必要があります。
簡単にいうと、勘定コード表には必要な全ての勘定科目(=勘定コード)を登録されている必要がありますよ!ということです。
勘定コード表を整理しておくことで、どの会社がどの勘定コード表を使うのか?という設定をすることができます。
例えば、会社Aは独自の勘定コード表を使い、会社Bと会社Cは同じ勘定コード表を用いるといったことが可能です。会社コードの設定画面から指定することが可能です。
同じ勘定コード表を用いれば、会社Bと会社Cは連結決算することが可能になります。親会社と子会社で連結決算を行うような企業は勘定コード表を利用することが一般的です。
勘定コードの仕組み
ここからはSAP上での登録手順を解説しつつ、勘定コード表の仕組みを分かりやすく解説します。
実際の設定画面を追っていくことで勘定コードの仕組みや、SAPで管理できる情報が分かるようになります。全てを暗記する必要はありませんが、勘定コードとは何か?を理解できるように丁寧に学習しておきましょう。
勘定コード表レベルの設定 vs 会社コードレベルの設定
勘定コードの設定は以下2つのレベル(次元)で設定することが可能です。
例えば、勘定コードの名称やコード値などはすべての会社で共通します。ただし、さらに細かいレベルで消込管理をするかどうか?といった点は利用する会社によって異なる場合があります。
このように、勘定コード表レベルと会社コードレベルの2つの次元で設定を行うことで柔軟な勘定コードの運用が可能するのがSAPの特徴の1つ。
以上の点を踏まえて、勘定コードマスタの登録方法を見ていきましょう。
トランザクションコード:FS00
トランザクションコード:FS00を押下すると勘定コードマスタの登録画面に遷移します。
一般設定(勘定コード表レベルでの設定)
設定画面の細かい部分は実はSAPの設定によって微妙に異なります。業務として利用しない項目であれば、そもそも表示しないようにできるのもSAPの利点であり、複雑な点です。
コード値とテキスト
「コード値」と「科目名」は勘定コード表レベルの設定です。
例えば「10000000」というコード値に対して名称:売掛金、というようなごく一般的な設定です。基本的に、このコード値とテキストをその場で決めていくことはほとんどありません。経理部/財務部がSAP導入時に一覧でコード体系を決めているはずです。
コード値は「20文字の短いバージョン」「50文字の長いバージョン」の2つを指定します。同じ名称で登録してもOKです。SAP標準で、「20文字の短いバージョン」を表示する場合、「50文字の長いバージョン」を表示する場合があり、ここの設定が生きてきます。
B/S勘定かP/L勘定か
その勘定科目が、B/S勘定かP/L勘定なのかという設定も勘定コード表レベルで管理しています。
BS勘定とは、貸借対照表勘定のこと・PL勘定は損益計算書勘定のことです。
勘定グループの指定
勘定グループとは、各勘定コードを利用される業務ごとに分類したものです。
例)財務諸表の分類をキーに勘定グループが設定されている場合
- 資産
- 流動資産 11
- 固定資産 12
- 繰延資産 13
- 負債
- 流動負債 21
- 固定負債 22
- 純資産
- 収益
- 営業収益 31
- 営業外収益 32
- 特別利益 33
- 費用
- 営業費用 41
- 営業費用 42
- 特別損失 43
勘定グループは、トランザクションコード:FS00(勘定コードマスタ登録)画面とは別の画面から事前に設定されています。
あくまでも、勘定コードがどの勘定グループに属するのかを設定するのがこの項目です。
ちなみに、勘定グループで制御しているのは、画面の入力項目と伝票番号範囲だけです。
会社コードごとの設定
勘定コード表レベルの設定はグループ企業全体に共通する内容がメインでした。
ここからは、会社コードごとのレベルで設定を行います。会社コードレベルの設定が、いよいよ業務内容に密接に関わってくる内容となってきます。
項目ステータスグループ
伝票入力画面を使用する際の画面レイアウト(項目を必須/任意/非表示を制御)を決定します。勘定グループの設定でも大枠のレイアウトが決まりますが、会社コードごとによっても個別に設定可能です。
例えば、「会社コード1000では参照伝票番号の入力を必須にする」「一方で、会社コード2000では任意入力にする」などの設定です。
この項目ステータスグループは、それ自体を事前に設定しておき、この項目では「どの項目ステータスグループに割り当てるか」ということを定義します。
勘定通貨
その名の通り、勘定コードで用いることができる通貨を設定します。
会社コードの設定で指定した「通貨」と同じ通貨(国内通貨と呼びます)を選択した場合、ちょっと意味不明ですが「全ての通貨で転記できる」ようになります。つまり、会社コードの通貨を「JPY」としていた場合、勘定通貨も「JPY」とすれば、USDでもJPYでも転記することができます。
全ての通貨で転記できますが、集計する際には国内通貨に変換される、という処理がされるようになります。これが、国内通貨の意味です。逆に、外貨(会社コード通貨と異なる通貨)を設定した場合はその名の通り、「その外貨でしか転記できません」。
集計する際の金額は、為替変換されずそのまま外貨の値となり、外貨だけで表示されます。
ここでわざわざ外貨を選択する目的が分からないので、基本的には会社コードで設定した通貨と同じ通貨を設定するのが無難です。
税カテゴリ
勘定で使用可能な税コードを設定します。基本的な設定方法は以下の4通りです。
税コード直接指定 | 指定した税コードのみで転記可能 |
---|---|
+ | 仮受消費税のみ許可(売上税、即ち収益勘定に割当) |
- | 仮払消費税のみ許可(購入税、即ち費用勘定に割当) |
* | 全ての税タイプを許可 (all tax types allowed) |
< | 仮払消費税勘定 |
> | 仮受消費税勘定 |
税コードも、この画面ではなく別の画面で事前に定義しておく必要があります。事前の定義をしていない場合、チェックがかかり登録ができません。
税コードなし転記可
この項目をチェックしておくと、伝票の明細に税コードが割り当てられていなくても転記することができるようになります。
ただし、積極的にこのチェックをする必要性は無いように思います。ここにチェックをするのであれば、税カテゴリの項目をブランクにしておくように制御したほうが転記ミスがなくなるはずです。
統制勘定
統制勘定を設定します。ここで定義した勘定で総勘定元帳に転記されます。
明細照会
このフラグが立っていないと、FBL3N等のトランザクションで勘定コードの明細照会ができません。(FB10N等で確認可能な"残高"のみ更新される。)
この項目でフラグを立てないメリットはない(見いだせていない)ので、社員にすら見せることができない勘定コード出ない限りはフラグをオンで設定しておきます。
明細消込管理
明細を消込管理するかどうかを設定します。
【発展】財務諸表バージョン
勘定コードマスタの更新・追加を行うと同時に多くの現場では財務諸表バージョンの更新が必要となります(必ずしもそうではありませんが)。以下のページでは、財務諸表バージョンの更新について解説していますので、合わせてご覧ください。
SAP / ABAPを1から学習したい方は
SAP / ABAPを1から学習したい初心者の方向けに、できるだけ網羅的にABAPが理解できるよう以下ページに知識体系を整理しています。
特に初心者のうちは、どこから学べばよいか?どう勉強すれば良いか?すらわからない状態になりがち。
ある程度の知識を持ったうえで、はじめて実践的な理解へとつながります。
是非、一度ご覧になってみてください。