SAPのFIモジュールで出てくる初心者殺しの "統制勘定" についてポイントを絞って解説します。
このページを読めば、統制勘定の利用・設定において必要な知識を網羅することができ、実際の業務で困ることは無くなるでしょう。
「統制勘定」は簿記3級程度の知識が前提と言われますが、システム的な仕組みに加えて簿記の超・基礎部分についても本ページでまとめて解説しておりますので、ご安心ください。
SAPのFIコンサルを目指す方であれば知らないと恥ずかしい超・基本知識の1つです。是非最後までご覧ください。
はじめに:総勘定元帳と補助元帳
統制勘定を理解するためには、まず簿記の超・基礎知識である「総勘定元帳」と「補助元帳」の理解が必須となります。
総勘定元帳・補助元帳について「100%」理解する必要はありませんが、概要をイメージできるよう最初に解説しておきます。
総勘定元帳
総勘定元帳とは、全ての「仕訳」(※全ての「取引」とご理解ください)が、記帳されている元帳のことを言います。あらゆる取引が「総勘定元帳」に記録されます。
〇〇費・支払給与・普通預金(〇〇銀行)などの全ての取引結果が網羅的に記録されているのが「総勘定元帳」です。その会社が行った取引は、全て総勘定元帳を見ればわかることになります。
この総勘定元帳を基に貸借対照表や損益計算書などの、各種財務諸表が作成されていきます。
関連:財務諸表バージョンとは?
補助元帳
総勘定元帳には全ての取引結果が網羅されている、と説明しました。ただし、総勘定元帳は網羅的であるため、逆に一つひとつの取引内容をさらに細かく管理するには別の記録表が必要になってきます。
それが「補助元帳」です。
補助元帳で分かりやすいのが、売掛金元帳と買掛金元帳です。
総勘定元帳には売掛金と買掛金の金額は総額で記帳されています。対して補助元帳には「取引先ごとの売掛金・買掛金」が記帳されています。つまりこんな感じです。
1.売掛金5万円
1.〇〇商店1万円
2.▽▽商店2万円
3.□□商社1万円
ご覧の通り、補助元帳は総勘定元帳をより細かい単位で記帳する元帳なのです。
さて、ここからさらに一歩深く、実際の経理業務での総勘定元帳と補助元帳の利用方法をみていきましょう。ここが「統制勘定」理解の第1チェックポイントになります。
補助元帳と総勘定元帳は同時に記帳される
取引先〇〇商店に1万円の売掛金が発生した場合、経理部門では補助元帳の取引先〇〇商店の欄に売掛金1万円を記帳し、同時に総勘定元帳にも売掛金1万円を記帳します。
記帳する順番はどうあれ、大事なのは同じ1万円という情報が同時に記帳されるということです。したがって売掛金元帳、そして総勘定元帳の売掛金の金額は必ず一致ということになります。
総勘定元帳をより細かく粒度で整理したのが「補助元帳」なのですから、考えれば当然ですね。
ただ、これ結構めんどくさくないですか?
もし補助元帳である売掛金元帳に記帳した瞬間にその情報が総勘定元帳に即時に転記されてくれれば・・・・
ここで考え出されたのが、統制勘定の概念です。
統制勘定とは?
統制勘定とは、補助元帳に転記されると同時に総勘定元帳に転記される勘定のことです。
SAPでは、売掛金元帳に〇〇商店1万円が記帳された瞬間、自動的に総勘定元帳に売掛金1万円が記帳されるような仕組みを採用しています。
つまり、売掛金元帳に1万円を転記する際に「総勘定元帳には勘定コード〇〇で転記する」と予め設定しておくことで、自動的に総勘定元帳に転記するようにしているのです。
このとき自動的に総勘定元帳に転記される勘定コードを統制勘定と呼んでいるということです。
統制勘定の概念はたったこれだけなのですが、いくつか注意点もあります。
ここからは、開発者視点からより詳しくシステム的な内容を解説していきましょう。
1.統制勘定は直接転記不可
統制勘定コードを伝票入力画面で利用することはできません。
理由は、統制勘定は「補助元帳への転記を前提としている」ためです。
よく考えれば当たり前なのですが、仮に統制勘定に直接転記できてしまう場合、転記すると同時に補助元帳への転記も必要です。これは、統制勘定そのもののメリットを破壊する行為であるため処理は不可能です。
もっというと、統制勘定への直接転記を不可とすることによって「総勘定元帳と補助元帳の金額が一致する」ということを担保していると考えることができます。
2.勘定コードごとに設定可能
統制勘定は勘定コードごとに設定します。勘定コードを登録する画面にて、統制勘定を設定する項目があるので、それぞれの勘定コードで設定可能です。
関連:勘定コードとは?
3.統制勘定コードを設定すると消込管理される
統制勘定として設定された勘定コードは、消込管理の対象となります。
消込管理とは「明細の処理(同一の勘定コード・同額以上での貸借逆の仕訳計上)が実施されているかどうかを管理」することです。わかりやすく言うと、対象の取引が完了しているかどうかを管理しています (売掛金に対する入金があるかどうか、買掛金に対する支払を行ったかどうか、ということを管理します) 。