SAPのFIモジュールの基礎「会社コード」を説明していきます。
記事後半で会社コードの設定方法自体も解説しています。
前半では、なぜ会社コードが重要なのか?という点に力点を解説します。というのも、会社コードって結局何?みたいな根本的な問いに答えることが、FIモジュールの基礎理解となるためです。
社内研修や、FIトレーニングで1番最初に会社コードの解説をするのはなぜか?
このページを読んでいただければその辺の謎も解けるはずです。
逆に言えば、この基礎理解がないままFIトレーニングを進めていっても、「設定」はできるけど「設計」はできない、ただの作業者になってしまうでしょう。
設定手順だけではなく、設定理由・根拠まで理解することで、できるFIコンサルへの道が開けます。
それでは、①「会社コード」とは何か、②設定方法の構成で進めていきます。
SAP―FIの基礎「会社コード」とは何か?
FIモジュールを理解・構築する第1歩は「会社コード」の理解です。
言い換えれば、「会社コード」の理解無くしてFIモジュールの理解は不可能と言えます。
ではなぜ、そこまで「会社コード」の理解が大切なのでしょうか?
「会社コード」の説明から入る前に、そもそも「FIモジュールの1番のゴールとは何か?」を考えてみましょう。
FIモジュールの1番のゴールは「財務諸表の作成」
結論から言えば、FIモジュールの1番のゴールは正確な「財務諸表」の作成です。様々なモジュール間連携データが最終的にFIモジュールに流れてきますが、その目的は法的に義務付けられている「財務諸表の作成」です。
(もちろん、それ以外の目的も存在します。)
財務諸表の作成は会社法で決められています。したがって、作りたいから作る、とかではなく、作らなくちゃいけないから作るのが「財務諸表」です。
FIモジュールはその財務諸表をいかに「効率的」に「正確」に出力できるかに焦点を当てているのです。
経理システムの開発をしていると、細かな設定に目が行きがちですが、どのようなシステムであれ最終的な目的・ゴールは「財務諸表」である前提を覚えておきましょう。
「財務諸表作成の単位」が「会社コード」
財務諸表を作成する単位、つまり一つの企業としての「法的実態」を表すために用いられるのが「会社コード」です。
財務諸表を別に出す必要がある企業単位で「会社コード」を設定する必要があります。
以下のようなグループ企業があるとします。
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■ABCグループ
①株式会社 ABC銀行
②株式会社 ABC保険
③株式会社 ABC投資信託
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この場合、「会社コード」を設定しなければならないのは、「①株式会社 ABC銀行」・「②株式会社 ABC保険」・「③株式会社 ABC投資信託」の3つです。
ABCグループ全体で一つの会社コードを設定することは誤りである。なぜでしょうか?
それは、グループの各株式会社ごとの財務諸表を出すことができなく(不可能ではないが「会社コード」以外の説明が必要となる)なってしまうためです。
あくまでも、財務諸表を作成する必要がある単位で「会社コード」を作成する必要があるんです。
FIモジュールの中で最も重要な設定が「会社コード」である
したがって、FIモジュールの1番のゴールである「財務諸表の作成」のもとになる「会社コード」はFIモジュールの中で最重要といっても過言ではありません。
もちろん、事業領域単位で財務諸表を出力することもできますが、SAPの基本方針として「会社コード = 会社の法的実態」として設定します。
今後、様々設定を行う中で、この「会社コード」が何度も登場してくるはずです。ここで、設定を誤ってしまうと後続の設定・開発が全て誤った方向に傾いてしまうので、慎重に、確実に設定を済ませておきたいですね。
「会社コード」の設定方法
ここからはより実践的に「会社コード」の設定方法を紹介していきます。
各入力画面でポイントとなる項目を説明しているので、読み飛ばさずに最後まで進んでください。
①コンフィグレーション(SAPの設定)画面を開く。
①-1. T-Code: "SPRO"をコマンドに入力する。
①-2. "SAP完全版IMG"ボタンを押下する。
①-3. 以下の階層を開き実行ボタンを押下する。
②「会社コード」をコピーする。
「会社コード」は1から設定するのではなく、もともとあるフォーマットからコピーして作成するのが普通です。
例えば、株式会社ABC銀行で既に「会社コード」を設定済であれば、株式会社ABC銀行を基に株式会社ABC保険の「会社コード」を設定することが可能です。
言うまでもなく、設定する「会社コード」とコピー元である「会社コード」は似たようなものであるほうが何かと便利です。
②-1. 下記画面の赤枠内をクリックする。
②-2. 赤枠内のボタンをクリックする。
②-3. コピー元の「会社コード」を上段に、新規作成する「会社コード」を下段に入力する。
「会社コード」は4文字の英数字で入力する。
基本は「1000」「2000」「3000」で設定することが多いですが、「A100」なども設定可能です。何なら英数字だけでも設定可能です。
(英数字を使わなくても最大9999個会社コードが作れるので、見かけたことはありません)
③「会社コード」の基本設定を行う。
ここからは、コピーして作成した新しい「会社コード」の、会社名、住所、国、通貨、言語を設定します。
それぞれシステム的にどのような意味を持ってくるかを理解する必要があります。最低限以下の知識を抑えたうえで設定を行っていたいですね。
- 会社名・住所 ⇒ 帳票やレポートに記される名称・住所の参照元になることが多い
特に日本では、業務で帳票を多用する。内部利用が目的の帳票から、外部(取引先)に送付するものまでたくさんあります。
帳票はアドオンで作ることが多いが、その際に名称や住所データの参照元になることが多いのが、ここで設定する会社名と住所です。
住所の記載が誤っており、取引先からの返答封筒が1通も届かなかった、という事例もあるぐらいなので、誤りなく設定する必要があります。
- 国 ⇒ SAPが標準で持っている国別要件の機能と関係する
日本の場合は「JP」と設定します。ここで、適当な設定をするとSAPが標準で持っている各国特有の機能が勝手に結びついてしまい、消費税関連の機能に影響が出てきます。
※通貨・言語に関しては、ここでは詳しい説明は行いません。国の設定と整合性を持たせて設定しておけば特に問題ありません。
では、それぞれの設定方法を確認していきます。
③-1. 下記青枠内をダブルクリックする。
③-2. 対象の「会社コード」をダブルクリックする。
③-3. 会社名・住所・国・通貨・言語を設定する。
FI資格取得にむけてのおさらい:会社コード
- 「会社コード」は法的実態(財務諸表を作成する単位)で設定する。
- 「会社コード」はFIモジュールの中で最も重要な設定である。
- 「会社コード」は4桁の英数字で定義し、基本的な設定を行うことができる。